もっと、教えて。 : 008

耽溺
どちらかといえば物事に動じない性格であると自負しているラクツは今、極度の緊張と興奮に襲われていた。何せ、心から愛する娘の胸をこれから拝もうというのだ。何も感じないわけがない。

「……外すぞ」
「うん……」

きちんと断りを入れて、ファイツの背中に手を回す。指先が小刻みに震えた所為で下着のホックを外すのに手こずったのは意外だった。脳内で彼女を抱いた時は容易く外せたのになと、荒い息を吐きながら苦笑する。頭の中だけで実行するのと現実世界で実行するのとでは、やはり天と地程の差があるらしい。そんなことを思いながら、ラクツは働きが鈍ってしまった指を動かした。やっとのことで外れた、レースのついた可愛らしい下着を丁寧に取り外す。

「……っ」

可愛らしい下着に覆われていたのは、綺麗な胸だった。瞬きも呼吸すらも忘れて、ラクツは眼前に晒されたそれは見事な胸を凝視していた。日光に晒されないおかげで白い太ももより殊更に色が白い胸は、やはりかなりの大きさだった。きめ細やかな白い膨らみの大きさに反して、先端はかなり小さいようにラクツには思えた。彼女の性格を表したかのような控えめな大きさのそれは、淡い桃色の下着より更に淡い色をしている……。

「その……。あんまり大きくなくて、ごめんなさい……っ」

例によって悪い方に解釈したのか、耳を疑うような言葉を発したファイツに苦笑する。この期に及んで”小さい”などと、何を言っているのか。

「客観的に言って、大きい方だろう。少なくとも、ボクは豊満な胸であると解釈しているが」
「そう、なのかなあ……。ラクツくんは、やっぱり大きい方が好き?」
「いや。大きさ云々より、ボクにとっては誰の、ということの方が余程重要だ」
「……そっか」

即座に否定すると、ファイツは頬を染めて微笑んだ。何がどうしてそんな結論に至ったのかは知らないが、自分からすればまったく無意味な質問だ。ファイツだからこそ、ラクツは”抱きたい”と思うのに。

「……綺麗だな」

そんな彼女を気遣ったわけではないけれど、ただ一言、ラクツはそう告げた。それしか言えなかった。月並みな表現だけれど、色白の胸によく映えた淡い桃色をしていて本当に綺麗なのだ。脳内で、ラクツは裸体のファイツを何度も想像した。しかし現実のファイツは、想像上のファイツとは比べ物にならないくらい綺麗だった。

「…………」

眼前のファイツはこれ以上になく綺麗で、同時にいやらしかった。早く胸に触りたいと、とにかくそれだけを考えていたラクツは、胸元のボタンを外すだけに留めた。しかし、改めて見ると彼女の恰好はいやらしいにも程があるとラクツは思った。豊満な胸はしっかりと露出しているのに下のボタンは留められている所為で、一糸まとわぬ姿より却っていやらしかった。ラクツは自然と口内に滲み出て来た生唾を、喉を鳴らして飲み込んだ。”この娘が早く欲しい”。心の底からそう強く思った瞬間に、自身が反応しきったことを自覚して苦笑する。本日3回目の反応だ。

「本当に、綺麗だ……」
「あ……っ」

今すぐにでも彼女の中に入りたいというのが本音だったが、いくら何でもその本音を実行するわけにはいかない。段階を踏まなければと決意したラクツは、改めてファイツの胸に目線を向けた。全てが綺麗だが、やはり目を引くのは胸の大きさに反する小さな先端だ。男の本能を刺激する淡い桃色をした先端は、早くもある程度反応してくれている。首筋を舐め上げた時の反応からして薄々分かっていたことだが、この娘の感度は少なくとも悪くはないのだろう。ラクツはそう思った。

「そんなに見ないで……!は、恥ずかしいよぉ……っ!」

言葉通り、ファイツが恥ずかしそうに身を捩る。その動きに合わせて、実に柔らかそうな膨らみがふるんと揺れた。

「…………」

顔を赤くさせながら瞳を潤ませているファイツを一瞥したラクツは、はあっと深く嘆息した。もし本当に止めて欲しくて身体を背けたのなら、それはまったくの逆効果だ。むしろ劣情を更に煽り立てる結果にしかなっていない。大きい所為なのか、未だに揺れている胸に向かってラクツは手を伸ばした。嬉しいことに勃ち上がりかけている豊満な左胸の淡い先端を、利き手の親指と人差し指で軽く摘まむ。

「きゃあああんっ!」

その途端に、ファイツは悲鳴を上げてのけ反った。鼻にかかったか細いそれは、明らかな嬌声だった。甘い悲鳴を聞けたことで気を良くしたラクツは、右胸の先端を親指で押し潰した。

「ふああんっ!」

またしても耳にしたファイツの悲鳴は、やはりどこまでも甘かった。官能を刺激する甘い声だ。この娘の艶声をもっと聞きたいという本能に逆らわずに、何度も何度も指で優しく押し潰す。

「ひああっ!……ラ、ラクツくん、そんなにしちゃダメ……っ!」
「ん……。すまない、痛かったか?」

愛撫の度に声を漏らす彼女が愛おしい。熱に浮かされた頭でそう考えていたラクツは、ファイツが発したそんな言葉で手を止めた。ファイツを感じさせたいのはやまやまだったが、それで彼女が嫌な思いをするなら意味がない。

「ち、違うの……。痛くはないんだけど……」
「じゃあ、どうして?」

ふるふると首を横に振ったファイツは、躊躇っているのかしばらくの間黙っていたが、それでもおずおずと「あのね」と言った。

「その……。き、気持ちよくて……。えっちな気持ちになっちゃうんだもん……」
「ボクにそうされたいと言ったのは、他ならないキミだろう?」
「そ、そうなんだけど……!やっぱり恥ずかしくて……っ」
「恥ずかしい、か。……ボクをあれ程大胆に誘っておいて、よく言う」
「きゃあん!」

今度は口に出さなかったものの、仕置きだとばかりに両胸の先端を指で弾く。つい先程、握られた手を胸に導かれたのは記憶に新しい。恥ずかしいと言いながら胸を触って欲しいと態度で示した娘の望みを、きちんと叶えてやらなければ。

「あん!それダメ、ダメなのお……っ!」

どう聞いても甘いものでしかない声を漏らすファイツには構わずに、思うままに愛撫を続ける。指先で段々と主張しつつある先端を高速で弾くと、彼女の唇からはやはり艶のある声が漏れ出した。そういえば、胸を直に触っているというのにまだ深いキスをしていなかった。唐突にそのことを思い出したラクツは、いったん愛撫を止めると彼女の後頭部に手を回した。桜色の唇に自分のそれを押し付けた。形のいい唇をなぞるように、繰り返し舐め回す。

「ん!……ん、ぅん……!」

唾液で濡れたファイツの唇が半開きになった瞬間を狙って、強引に舌を差し入れる。普段しているものとはまるで違う、初めての深いキスだ。歯列を一通りなぞって、彼女の温かい口内を堪能する。ファイツの温かな口内で自身を刺激して欲しいという思考が一瞬脳内に過ぎったが、頭の片隅に追いやった。流石に初めての行為でそれを強いるのは酷だろう。

「あ、あん……っ」
「……は、……はあ……っ」
「……っ!やあ……っ」

その代わり、というわけではないけれど。驚いたのか反射的に引っ込んだ舌を自分のそれで捕らえたラクツは、暴れるそれを執拗に絡ませた。ざらついた舌が擦れ合う感触が、とうに焼ききれたラクツの理性を急速に奪っていく。一通り味わったところで、ゆっくりと唇を離した。混ざり合った唾液が、音もなく落ちる。至近距離にある彼女の顔は、完全にとろけていた。

「きゃあ!」

まず間違いなくキスで感じてくれたであろうファイツを、再びソファーに押し倒す。彼女の色香に耐えられなかったのだ。勢いをつけた所為でソファーが軋んだが、ラクツは構わなかった。またしても目の前でふるんと大きく揺れた胸を、持ち上げるようにして優しく揉みしだく。脳内で何度も何度も、繰り返し行った通りに。

「ああん……っ」
「本当に柔らかくて、揉み甲斐のある胸だな。……まったく、何が”小さい”んだか……」
「あ、や!だって……っ」
「……だが、こちらは硬いな。愛撫に反応してくれたんだな、ボクとしても嬉しいぞ」
「あ!?ひゃあんっ!!」

今度は体重をかけて、尖りきった桃色の先端を押し潰す。じっくりと、実に丹念に押し潰すと、ファイツは頭を振り乱して嬌声を上げた。まるで舐めて欲しいと言わんばかりに逸らされた首筋に舌を這わせる。ざらついた感触を長く味わって欲しくて、狭い範囲をゆっくりと舐め上げた。その度にびくびくと身体を捩るこの娘が愛おしくて堪らなかった。

「ひあ……っ!」

顔が真上に向いたタイミングで、鎖骨に標的を切り替える。そしてこちらも適度なところで切り上げると、まだ一度も刺激を与えていない場所に狙いを定める。小さな、しかし硬く尖った左胸の先端だ。

「きゃあああんっ!」

ざらついた舌で可愛らしい先端をひと舐めした途端に、ファイツは身体を大きく跳ね上げさせた。今日これまで聞いた中で一番の大きさだ。

「や、ダメ……っ!舐めるのダメ……!」
「そうか。ファイツは舐められる方が気持ちいいのか」
「やあ……っ!そこで喋らないでぇ……!」
「ん……」

ラクツは構わずに硬い先端を口に含んだ。どう見ても感じているファイツの訴えは、かわいそうだが無視することにした。

「ひああん!や、ダ、ダメだってばあ……っ!」

感触を味わうかのようにゆっくりと舐め回すと、ファイツは足を忙しなく動かした。ダメと言いつつも感じているようにしか見えない彼女に、思わず苦笑する。

「ファイツ、ボクは時々キミが分からなくなる。普段は素直な娘なのに、性が絡んだ途端に頑固になるとは知らなかった」

ファイツは本当に素直でいい娘だと思う、だけどこういう時にこそ素直さを発揮して欲しいものだとラクツは思った。触って欲しいと言って来た癖に、身体の反応はこれ以上になく正直なのに、先程から「ダメ」ばかり口にするというのはどうなのだろうか。

「ああん!いきなりしちゃダメ……!」
「また、”ダメ”か。……じゃあ、事前に宣言すればいいんだな。左胸はこのまま舐めるとして……。そうだな、右は摘まむことにするか」
「あ、待って……。あああんっ!」

宣言通り、左は舌で。そして右は、痛くしない程度に指で。それぞれの先端を優しく愛撫すると、ファイツの唇からは甲高い悲鳴が上がった。

「あ、いい……っ!!気持ち、いいの……っ!」
「そうか、気持ちいいか。もっと快楽に素直になってくれていいんだぞ」
「う、うん……。自分でした時より、ずっと気持ちいいよぉ……っ」
「……ん?」

聞き捨てならない言葉で、舌と手が止まる。まさかと思いながら顔を離してファイツを見ると、瞳を潤ませた愛おしい彼女と目が合った。恥ずかしそうに目をさっと逸らした娘の顔は、耳まで真っ赤だった。