幸せの在処 : 006
ずっとずっと、欲しかった
一糸まとわぬ姿になった恋人を見下ろしたラクツは、悩ましさから思わずはあっと溜息をついた。視界にはファイツの裸体がしっかりと映っているわけなのだが、暗闇の中にいるおかげでその見事な身体は朧げにしか見えなかった。だけどそれでもラクツは綺麗だと思った。月並みな表現だけれど本当に綺麗だ、それ以外の言葉がまるで思い浮かばない。もちろんもっと明るいところでじっくりと見たいというのが本音なのだが、彼女がそれを望まない以上は強行するつもりはなかった。その代わりというわけではないけれど、ファイツの裸体を目に焼き付けるかの如くじっと見つめる。やはり目を引くのは豊満な胸と、そしてつい今しがたまで下着によってしっかりと隠されていた場所だった。そこを見ているうちに自身がまた反応したのが分かって、ラクツは再び息を吐いた。もうこちらの方はすっかり準備万端となっていて、後は避妊具さえ装着すればもういつでも挿入出来る状態だった。しかし自分は良くてもファイツの方はそうではないはずだ、何しろ濡れているとはいっても中はまったく解していないのだ。欲望に駆られて無理に挿入した結果、大切なこの娘の身体を傷付けることになるのは絶対に嫌だった。特に初めて行為をする女は大抵挿入時に苦痛を伴うらしいし、ここはやはり充分過ぎる程に解しておきたい。しかしあのようにしっかりと足を閉じられていては出来るものも出来ないわけで、ラクツは苦笑しながら彼女の名を呼んだ。「な、何……?」
「もう少し足を開いてくれ。今の状態では、この続きが満足に出来ない」
「う、うん。そうだよね……」
そう言ったファイツは閉じていた足を確かに開いてくれたのだが、その実本当に少ししか開いていなかった。恥ずかしがりやな彼女らしいと言えばそうなのだけれど、行為を続けるにはその間隔では全然足りないのだ。
「もっとだ、ファイツ。思い切り開いてくれるとありがたい」
「……っ。こ、これでいい……?」
ファイツは何とも恥ずかしそうに、だけどこちらの頼みに応じてしっかりと足を開いてくれた。そんなファイツに「ありがとう」と言ったラクツの鼻腔を、艶めかしい匂いがくすぐった。言うまでもなくその匂いの出所はファイツの足の間からで、自分が彼女の身体に触れた影響で溢れ出したものが匂いの正体なのだろう。ファイツの秘められていたところがこちらを誘うように攣縮しているのが暗い中でもはっきりと見えて、ラクツは喉を鳴らして唾液を飲み込んだ。その求めに応えて今すぐにでも自身を挿入したいと考えてしまった自分をどうにか律して必死に言い聞かせる。彼女がそれを望んでいるとは思えない、何より自分自身がそうしたくない。ラクツ自身もそうだが、ファイツだって初めて肌を重ねるのだ。互いにとって初めてのそれを、互いにとってのいい思い出にしたい。ここで欲に駆られてはその目論見が台無しになってしまう。自分勝手な欲望を何とか霧散させることに成功したラクツは、恋人の秘められていた場所へといよいよ手を伸ばそうとしたところでふとその手を止めた。消え入りそうな程に小さく名を呼ぶファイツの声を聞き取ったのだ。
「……どうした?」
どうやら、ファイツは今相当に不安を感じているらしい。そのことを声の様子から悟ったラクツは努めて優しい声でそう尋ねた、せめて少しでも不安を払拭してやりたいと思ったのだ。”怖い”とか”やっぱり止めたい”とか、そういう言葉がもし彼女の口から発せられることになった場合は、ラクツは途中で行為を止めるつもりだった。「どれ程嫌がろうとも抱く」と言った際に彼女は頷いてくれたものの、途中で考えが変わることもあるだろう。未練がないわけではないが、ファイツの心を傷付けてまで抱く気にはなれなかった。
「何を不安に思っている?」
「あ、あのね……。ラクツくんが、ラクツくんが……」
「ああ」
「な、中々……。その、さ……触って来ないから……。だから、どうしたのかなって思って……」
「…………」
今しがたの発言が余程恥ずかしかったのか、ファイツは頑なにこちらを見ようとしなかった。よくよく考えてみれば彼女が不安に思うのも当然だろう、何しろ足を開くように頼んだのはラクツの方なのだ。それなのに中々触れられないとなっては不安になるのも仕方のないことだろう。しかし、まさかそういう意味で不安を抱かれているとは露程も思わなかったラクツは、少々呆気に取られながらもファイツを見つめる。もじもじと身体を動かしている彼女の動作は、もう自分を煽っているようにしかラクツには思えない。男としての欲望と拒絶されなくて良かったという安堵が入り混じった息を、深く吐き出した。
「……ラクツくん?」
「ああ、いや……。まさか、ファイツがそんな発言をするとは予想外だったからな」
「うう……。えっと……幻滅しちゃった?」
「そんなわけがないだろう。むしろ、ボクは安堵したぞ。……正直、”怖い”とか”止めたい”とか、そんな言葉を告げられるかもしれないと思っていた」
思ったことを正直に告げると、ファイツはただでさえ大きい瞳を更に大きく見開いた。彼女はそのまま数秒間そうしていたが、やがて我に返ったのか首を横に振った。それはもう、思い切り首を横に振っている。その動作で、ファイツが心からそう思ってくれていることを察したラクツは柔らかく目を細めた。
「そ、そんなことないよ!だって、ラクツくんだもん……。ラクツくんだから、触られてもいいって思えるんだよ?」
「そうか。ボクも、ファイツだから抱きたいと思っている。もうキミに挿れたくて堪らないわけだが、先程はその欲と戦っていたんだ。不安にさせて悪かった」
「謝らないで、ラクツくん。その……。あのね、ラクツくんがそうしたいなら……あたしはそれでもいいよ?」
ファイツのその発言は実に魅力的だったのだけれど、ラクツは「いや」と言って首を横に振った。そして苦笑を漏らす、こちらを気遣ってくれるのはありがたいのだが、何よりも今は自分の身を気遣って欲しいと思った。
「そういうわけにはいかないな。そんなことをしたら、確実に強い苦痛を伴うぞ。それはキミも嫌だろう」
「そ、そうなの……?」
「どうやらそうらしい。ボクとしてもファイツにそれを強いるのは不本意極まりないし、それに……」
「ふああっ!?」
ラクツはそこで言葉を切って、本格的に触れようとしていたところに指でそっと触れる。その途端に嬌声を上げて身体を跳ね上げさせたファイツを、心底可愛いと思った。微笑みながら、今度はそこを円を描くように刺激する。
「ああんっ!」
「……それに何より、ボクがそうしたい。ファイツにもっと触れたいし、もっと気持ちよくなってもらいたい。望み通り遠慮なく触れさせてもらうぞ。不安になる程待たせた分、思い切り感じさせてやるからな」
「やあ……っ!!んんっ……!」
”そこ”を擦るようにして刺激すると、ファイツは身を捩らせて嬌声を漏らすという可愛らしい反応を示した。情報通り、彼女もその部分を刺激するとやはり感じるようだ。しかしラクツには気にかかることがあった。身体を触り始めてそれなりに時間が経つのに、ファイツはまだ口を手の甲で覆っていたのだ。どうやら嬌声を上げることに、そしてそれを聞かれることに未だに抵抗があるらしい。
「ファイツ、声を出すのを我慢しないでくれ。何度も告げたが、可愛い声だと言っただろう。ボクしか聞いていないから、存分に上げてくれていいんだぞ。むしろ、ボクはそうして欲しいわけだが」
「で、でもっ……。……でも……!」
そう告げてもなお抵抗を示すファイツを一瞥したラクツは、その場所に触れていた指をそっと離した。こうなれば、声を出すことを気にする余裕もないくらいにファイツを感じさせてやる他ない。
「……ラ、ラクツくん……?」
ファイツの訝しげな声を聞き取ったラクツは、けれど今度は彼女に構わずに顔をそこへと近付けた。暗いとはいえ秘められていたところを見られるのは流石に躊躇いがあるのか、彼女の焦ったような声が聞こえたものの、ラクツはやはり構わなかった。
「ラクツくん、ダメ!そんなのダメだよ……っ!」
自分に間近で見られることか、それともこれから起こる事態を予期してのことか。そのどちらの観点からファイツがそう言ったのかは分からない。しかしそれでも、ラクツは今から行うことを止めようとは微塵も思わなかった。元々そうするつもりではあったし、何より彼女にもっと強く感じて欲しかったのだ。ラクツは今まで刺激を与えていたところに向かってゆっくりと舌を近付けた。そして唾液を充分に含ませた舌で、そこを上下に優しく舐め上げる。
「ひゃあんっ!!」
それを舌で舐め上げた途端に、ファイツは大きく背中を反らせた。その拍子に彼女の足がこちらに当たったのだが、ラクツは構わず口淫を続ける。普段なら意図せず身体をぶつけてしまった場合でもこの娘は必ず謝るのだけれど、その様子はまるで見られなかった。それでいいとラクツは胸中で呟く、周囲に余計な気を配らなくなった証拠だ。今度はそこを押し潰すように優しく舐め回すと、ファイツは何とも艶めかしい声を上げて小刻みに身体をぶるぶると震わせた。その反応を見たラクツは、胸中で堪らないなと呟いた。
「ああっ……!……ああんっ!何これ……っ!」
「ファイツ、気持ちいいか?」
嬌声を上げている以上、彼女が今感じているのは疑いようのない事実だった。何より舐め上げているうちにそこが固く尖って来たことがその事実を顕著に示しているのだが、ラクツはあえてそんな言葉を投げかけた。意地が悪いことだと自分でも思うのだけれど、どうしてもこの娘の口から気持ちいいと言わせたかったのだ。
「……ラ、ラクツくんの意地悪っ!分かってる癖に……っ!」
「それにはまったく同感だな。だが、ボクとしてもファイツの口から直接聞けないと不安になるんだ。キミを本当に感じさせられているのか、その確証が得られないものでな」
「え……」
わざとらしく眉根を寄せながらそんな小狡いことを言うと、ファイツは口を噤んでしまった。そしてその数秒後にまたもじもじと両手を擦り合わせながら、極々小さな声で「気持ちいい」と恥ずかしそうに口にした。明確に恥ずかしがりながらも、それでもこちらに目を合わせてそう言ってくれた彼女のことが堪らなく愛おしくなって。ラクツは何も言わずに、今度はファイツの秘められた場所に口付ける。
「ひゃんっ!……そ、そんなことしちゃダメっ……!」
「何故だ?気持ちいいだろう」
「そうだけどっ……!でも、き……汚いから……っ!」
ファイツはそう言うと、こちらの頭に両手を添えた。本人としては止めて欲しいのだろうが、それでもファイツからは本気で嫌がっている様子は見受けられなかった。こちらの頭にただ手を添えているだけで、一向に押し返そうとして来ないことがその証拠だ。例によって、そうされるのが単に恥ずかしいだけなのだろう。彼女の態度を都合良く解釈したラクツは閉じられたそこを指でそっと押し開く。そして、内部を舌で優しく刺激した。
「ひあああっ!ラ、ラクツくん……っ。それダメっ……やああんっ!」
”ダメ”と口にしたファイツの言葉を遮るように舌を差し入れて刺激した結果、嬌声と共に汗ではない何かが口内に流れ込んで来た。だが不思議と不快には感じなかった、むしろどこか甘味を感じたくらいだ。甘いものはあまり好かないのだが、ファイツのそれは別だった。蜜のようにも思えるそれが、他でもないファイツのものだからこそそう感じるのだろう。もっと味わいたいと素直に思ったラクツは、今度は内部を舌で優しくつつくようにして更に刺激を加える。
「ひゃああっ!……ダ、ダメだってばあ……っ!」
またもやファイツの”ダメ”を耳にして、ラクツは一瞬だけ眉をひそめた。感じているのは明らかなのに、彼女は依然として素直に快楽に身を委ねてはくれなかった。その反応からしても、確かに彼女は口淫をされるのは初めてなのだろう。もちろんラクツだってこんなことをするのは初めてで、だから自分の技術が拙いであろうことは素直に認めている。それでもファイツ本人の口からはっきりとした「気持ちいい」という言葉が聞きたくて仕方がなかったラクツは、こちらを制止する彼女の言葉をかき消すかの如く、あえて大きな音を立てながら蜜を啜った。
「あああんっ!」
そうしてみたところ、ファイツは腰を大きく跳ね上げて艶めかしい声を上げた。その反応に気を良くして、しばらくの間思うままに行為を続ける。しかし、不意に彼女に頭を軽く数回叩かれる羽目になったラクツは口淫を中断した。とうとう彼女は、本気でこちらの口淫を制止する気になったらしい。流石にこう何度も抵抗されては無理にする気にもなれないし、何より足を閉じようと懸命に頑張られては行為もし辛い。遅過ぎる抵抗に苦笑して、ラクツは彼女の秘められたところから口を離した。
「ファイツ、ボクは気にしないと言っただろう。それより足を無理に閉じないでくれ、集中して舐められない」
「も、もうそれはいいから……っ。あんなところを舐められるなんて、恥ずかしくて死にそう……っ!第一、ラクツくんだって本当は嫌でしょう?」
「いや、まったく。相手がキミだから、ボクは別に気にならないな」
「あたしは気になるの!本当、死んじゃいそうだよ……っ!」
「…………」
まだ心臓がどきどきしてると言って、ファイツは胸に手を当てた。その拍子に豊満な彼女の胸が誘うように揺れるのが視界に映る。彼女は心臓を必死に宥めようとしているだけなのだろうが、こちらからはやはり煽っているようにしか見えない。ラクツの中で、何かが音を立てて弾け飛んだ。
「……分かった。そう言われては、ボクとしても引き下がらざるを得ないな」
「良かった……。じゃあ……ふあああっ!な、何したのっ……!?」
「今日はこれ以上口淫をしない代わりに、指を入れた。……まったく、お前はボクを煽るのが本当に上手いな……っ」
「やああんっ!」
溜息混じりにそう言いながら、ファイツの膣内に差し入れた指を好き勝手に掻き回す。本人にその自覚はまるでないのだろうが、先程のあれは胸を見せつけられているようにしか受け取れなかった。いいかげん入りたいと叫んでいる自身は、先程の光景と現在進行中の行為で更に激しく自己主張している。
「あん、煽るって、何……っ……?」
「ファイツの胸をあれ程挑発的に見せつけられては、ボクも流石にもう無理だ。本当にもうこれ以上我慢出来ない、今すぐにでも挿れたいくらいだ……っ!」
もう片方の手でファイツから零れ落ちた蜜を掬い取ったラクツは、滾った欲望をぶつけるかの如く先程触れていた場所を指で刺激した。固く尖り切ったそこを、彼女自身の蜜を塗りたくるようにしてぬめった指で強く擦り上げる。
「ああっ!」
「こうすると、舌で舐められるような刺激を感じるだろう?……ああ、また一段と固くなったな。それに、キミの中に入れている指も強く締め付けられた。ボクの手でしっかりと感じてくれているんだな、嬉しいことだ」
「あん、ダメっ……!」
「……”ダメ”じゃないだろう、ファイツ。そんな艶めかしい声を上げているのにダメなのか?」
「やんっ!……だって、だって……っ!」
「普段は素直な割に、こういうことには一転して強情なんだな。快楽に素直になってくれる方が、ボクとしても嬉しいわけだが」
びくんと身体を震わせながらそう言った彼女を咎めるように、ラクツは息を吐き出しつつ苦笑混じりに切り返した。続けて爪でその部分をかりかりと優しく引っかくと、ファイツはまたも嬌声を上げて腰を跳ね上げさせた。
「ひゃあああっ!それダメっ!……ダメなのお……っ!」
「だが、ファイツ。口ではそう言うが、ボクの指はまた締め付けられたぞ。こんな反応をしたんだ、本当は”ダメ”ではないんだろう?」
「そ、そんなこと言わないでえっ!」
「分かった。今日はもう言わない代わりに、ボクの好きなようにさせてもらうぞ。そうだな、お前をもっと感じさせてやることにしよう」
「ひあああっ!ラクツくん、ダメ……っ。ダメだってばあ……っ!」
「……ああ、これでは満足出来ないか?もう少し強く引っかいてみるか」
「ひゃあああんっ!」
与えられる刺激がもう堪らないらしいファイツは身をくねらせながら艶めいた声を上げたが、ラクツだってもう堪らなかった。彼女の言動全てが魅惑的で、堪らなくラクツを刺激するのだ。だが、当の本人にはその自覚がまるでないことをラクツはよく知っていた。そんな彼女に手を出すのをよくここまで我慢していたものだと思った。
「ひゃあ……っ。ラ、ラクツくんの意地悪……っ!」
「……それはお互い様だろう?日頃のお返しだ」
「お、お返しって……?」
「まったく、無自覚だから質が悪い。今までも、そして先刻だってそうだ。お前が無意識に誘惑する度に、ボクは自制しなければと必死に言い聞かせて来たんだぞ?」
「誘惑って、あたしはそんなつもりじゃ……。やああ……っ!」
弱々しく反論するファイツには構わずに、今度は中に入れていた指を再び掻き回す。とうの昔に我慢の限界を超えていることを理解しながらもなお挿入しなかったわけなのだが、流石にもう堪らなかった。いいかげんラクツだって、この娘の中で気持ちよくなりたいのだ。
「さあファイツ、お前はどこがいいんだ?ボクに教えてくれ」
「え……どこ、って…?……ふああんっ!!」
「ん?……ここか?」
「あああっ!?な、何これ……っ!」
自分の指がある一点を掠めた瞬間に、ファイツは全身を震わせてそんな声を上げた。戸惑いながらも恥ずかしそうに顔を赤らめて、手をもじもじと忙しなく触れ合わせている。そんな彼女がいじらしくて、ラクツは笑みを浮かべた。本当に可愛くて堪らない、彼女の言動全てが愛おしい。そんなファイツを一段と気持ちよくさせてやれる場所をやっと探し当てたのだ。そのことを嬉しいと思ったラクツは、彼女がいい反応を見せたところを優しく擦り上げる。
「……なるほど、ここがお前の感じるところなんだな。憶えておこう」
「ひゃうっ!そんなに擦らないで……っ!」
「そう乞われても止めるのは無理だ。ボクの指で思う存分感じてくれ」
「ひゃああっ!」
「どうだ、ファイツ。気持ちいいか?」
そこを擦る度に腰と足を大きく跳ね上げて声を上げるファイツに、ラクツは先程と同じ言葉を投げかけてみた。すると今度は何度も首を縦に振られることとなった、余程気持ちがいいのだろう。
「あ、あん……っ。……気持ちいい、気持ちいいよおっ……!」
「……そうか、それは良かった」
ようやくはっきりとそう言ってくれた彼女に微笑んだラクツは、ファイツの下肢が小刻みに痙攣していることに気が付いた。もう少し強い刺激を加えれば、彼女はおそらく絶頂を迎えることだろう。
「挿れる前に一度達した方がいいな、その方がお前も更に感じるだろうし……。何より今のままだともどかしいだろう?すぐ楽にしてやるからな」
「ダ、ダメ……っ!!」
また彼女の”ダメ”が聞こえて来たが、ラクツは例によって聞こえない振りをした。ファイツの膣内から零れ出ている蜜はかなりの量で、既にこちらの手首まで垂れていたが、そちらも気にせずにファイツが感じるところを更に重点的に擦り上げる。
「ひゃあああんっ!」
「っ……。いい締め付けだな、念の為にもう1本増やすぞ」
「あああっ!?」
彼女をなるべく苦しませないように充分に中を解すという本来の目的をしっかりと憶えていたラクツは、指の本数をもう1本増やした。それにしても彼女の中は熱い、まるで指ごととろけてしまうような熱さだ。その中に早く自身を挿入したいと思ったラクツは、その感情のままに激しく全体を掻き回した。
「ひああっ!」
「大分解れて来たな。水音もはっきりと聞こえるくらいだ、これなら円滑に挿れられそうだな」
「ラ、ラクツ……くん……っ!」
「ん?何だ、ファイツ」
目線をファイツの身体から顔へと動かしたラクツは、けれど指を休めることはしなかった。片手でこの娘の弱いところを擦り上げ、同時にもう片方の手で先程引っかいた部分を再び蜜を撫でつけるようにして優しく刺激する。
「そ、そんなに……ひゃああんっ!」
元より思った以上に敏感な身体をしているらしいファイツだが、特に感じる場所を同時に刺激されてもう堪らなく気持ちがよかったのだろう。言いかけた言葉を最後まで言わずに、官能的に身体をくねらせて艶めいた声を上げた。今日耳にした彼女の嬌声の中で、一番大きな声だった。相当感じてくれているのだと思うと、やはり嬉しさが込み上げて来る。同時に刺激しているところのどちらがより気持ちいいのかと尋ねたところ、すぐに「どっちも気持ちいい」なんて可愛らしい答が返って来てラクツは目を細めた。まったく、可愛いにも程がある。
「随分と可愛いことを言うんだな。それなら、このまま同時に刺激することにしようか。甲乙つけがたい程、どちらも気持ちいいんだろう?」
「そうなの、どっちもすっごく気持ちいいの……っ!……あん、でも……っ」
「……でも?」
「そ、そんなに激しくしないで……っ!もう気持ちよ過ぎて、おかしくなっちゃうから……っ!そんなに激しくされたら、あたし、もう……っ!」
「そうか、もう達するんだな。我慢なんてする必要はないぞ、ファイツ。お前が達する可愛いところを、ボクによく見せてくれ」
「ああっ……!あああんっ!!」
特に感じるところを同時に、そして滅茶苦茶に擦ると、程なくしてファイツは声を大きく震わせて果てた。もう声の大きさを気にする余裕もまるでないのか、悲鳴のような声を上げたファイツはぐったりとしている。だが、余裕がないのはこちらも同じだった。彼女が達したことに思いを馳せたのはほんのわずかな間だけで、ラクツはファイツの中から慎重に引き抜いた自分の指を一瞥した。彼女の蜜で濡れているその指にはまだ仄かに熱さが残っている。あれ程丹念に中を解したのだから、もう大丈夫だろう。はあはあと荒い息を吐いているファイツと同様の呼吸をしながら、ラクツは身に着けている衣服を全て脱ぎ捨てた。用意していた避妊具を破らないようにだけ気を付けて手早く装着すると、ファイツを熱を込めた視線で見据える。早くこの娘の中に挿れたい、挿れたくて堪らない。その一心だけでラクツは動いた。触れた瞬間にびくりと震えた彼女の足を軽く持ち上げて、挿入しやすい体勢へと整える。
「……ファイツ」
「ラクツ……くん」
ファイツの秘められていた場所に自身を軽く押し当てた状態で、ラクツは彼女の名を呼んだ。流石にこれだけは同意もなしに出来ない、理性がここまで飛んでいる自分でもそれはしたくない。暗い中でも鮮やかに蒼く煌いた彼女の瞳を見つめて、ラクツは緊張と興奮から震える唇を無理やりに押し開く。
「……挿れていいか?もういいかげん、ファイツの中に入りたい」
「……はい」
しっかりと頷いてくれたファイツも緊張しているのだろう、その声は明らかに震えていた。だけど、その声にはやはり恐怖の色は見られなかった。気丈にしているファイツに「出来るだけ優しくするから」と告げて、ラクツは優しく微笑む。この瞬間をずっと待っていた、本当に心待ちにしていたのだ。ずっとずっと欲しくて堪らなかったファイツの中へと、ラクツは言葉通りにゆっくりと自身を押し進めて行った。